ドーナッツの穴で世の中の全てのことが分かった気がする

リスカするリスはリス科なの?
その少年は無邪気に聞いた
まだ純真なのだ
それって良いことなのだろうが
汚れていないシーツは
まだ使っていないのと同じことなのだが
嫌な奴
ひどく蔑む(さげすむ)べき人間は
確かにこの世の中にはいる
サイテーなサイケ
サイコーなサイコ
サイコパスが饗宴で今日も喰う
オクトパスの脚が四方八方に絡みつき
導火線の赤と青とが互いに交わり合い
ハッカーが発火
アノニマスが薬飲ます
ダッカがもぬけの殻
ラッカはすでに敵の手に落ちた
ピーナッツバターには気をつけろ!
それで命を落とした人間もいる
落下傘が開かなくて
現金3000万ドルの入った
スーツケースを抱えたまま
アマゾンのジャングルに消えた者だっている
奴はきっと無事なんだ
今頃カリブ海のどこかで
リキュールかなんかを飲んで
くつろいでいやがるんだ
まったく保険屋だけが儲かる
この世の仕組み自体を
変えなくちゃいけない
一方その頃この街は
この何の変哲も無い田舎町は
あいつの噂で持ちきり
来年はいったい
年俸を幾らもらうんだ?
今年はそれで図書館3つと
消防署が2つと
アイススタンド1つと
ついでに市役所のくすんだ壁を
全部真っ白に塗り直し
なおかつさらに
ネズミの駆除剤を
この地上全匹数万回分殺せるような
圧倒的な量をトラック数十台で
庁舎に運び込んだって話だ
世の中何があるか分かったもんじゃ無い
連邦ビルが朝一番で一瞬で吹っ飛び
床屋で髭を剃られていた
組織の大物は赤い糸を滴らせて
あの世へと旅立った
ちょび髭の男が権力を握り
せむしの男がそいつの弱みを握ると
世界がアッと言う間にひっくり返ったもんだった
昔は良かった
何だって出来た気がした
薬局へ行けばすぐに100mなんて目と鼻の先
右へ と言われれば
言われるがままにそっちの方向に
打球を飛ばして見せたもんだ
昔は良かった
少年は母親に手を引かれながら
無邪気にまたこう尋ねる
透き通ったステンドグラスを指差して
ねぇ 神様って本当にいるの?
・・いたら私はこんな思いなんてしなくて済んだのよ
・・無残に戦場に散っていく若者なんて
いなくて済んだのじゃ無いかしら?
・・と、いう言葉を喉と前歯の2本目の
あたりで必死にこらえたその母親は
・・じゃあ、今日はオムライスにする?
と、小さなレストランへと
少年を誘導するのだった
カランコロン
しかし聡明なその少年は
その音で全てを悟ったのか
・・ねえ? そいつらが全部ポップコーンだったら、
腹に風穴を開けちゃうこともないのにね
全部食べちゃえば良いのさ
ちょうど出て来たウェイターは
思わずドキッとし
・・いつものことなんですよ。
気にしないで下さいな。
・・あ、ところでオムライスはございますか?
ウェイターは冷や汗を垂らしながらも
奥の席へと親子を丁重に案内したのであった

空いてる穴のところがドーナツなのか?
穴の周りのカリカリの一見余分とも
見える部分がドーナツなのか?
もう 今となってはもう誰にも分からない
この世界はそんなふうに何もかも
こんがらがっちまったのさ
とうに終わりは始まっちまったのさ
悟った顔でボロを纏った(まとった)老人が
にやけながらつぶやくのが関の山

おそらく神と呼ばれる高名な存在である人物は
もうとっくの昔に
我々を見限って
比較的安全な場所で
シェリー酒かなんかを
飲んでいやがるんだろう
そして
どっちが勝つのかで悪魔みたいな奴と賭けをする
善か? 悪か?
もちろん
誰もサイコロを振るまでは
出る目は分からない
ただ
ドーナッツの穴を覗いた者だけが
全て知っているって筋書きなのさ

ちなみに
最初の答えは
齧歯目(げっしもく)で正解
なんだけどな
ちょっとは勉強になったかな?